Amazon で自社ブランド商品を出品しているなら、Brand Registry への登録は実質的に避けて通れません。Brand Registry に登録すると、ブランド名の保護・違反出品の通報・A+ コンテンツの作成・ストアフロントの開設など、ブランドオーナー専用の機能群が解禁されます。 ただし申請手続きは「商標登録番号さえあれば通る」というほど単純ではなく、書類不備や名義不一致で却下されるケースが少なくありません。
この記事では Brand Registry の申請手順を、商標準備から登録完了までステップごとに整理します。よくある却下理由と、登録後にできること・できないことの線引きまでまとめました。
Amazon ブランド登録(Brand Registry)とは
Amazon Brand Registry は、ブランドオーナーが Amazon 上で自社ブランドの権利を保護するための無料プログラムです。2017 年に Brand Registry 2.0 として大幅刷新され、現在は世界中のブランドオーナーが利用できる基盤機能になっています。
登録のメリットは大きく3層に分かれます。
- 保護: ブランド名の不正利用・商標違反の通報、Report a Violation ツールへのアクセス
- 強化: A+ コンテンツ、ブランドストア、Sponsored Brands 広告などブランディング機能の解禁
- 拡張: Project Zero、Transparency、Amazon Vine などへの参加資格
特に商標違反の通報機能は Brand Registry に登録していないと利用できず、相乗り対策・偽造品対策の入口になります。
申請の前提条件 — 商標が最大の関門

Brand Registry の申請には、いくつかの厳格な前提条件があります。中でも商標の有無が最大の関門です。
1. アクティブな商標登録(または出願中商標)
Amazon は次のいずれかの状態の商標を受け付けます。
- 登録済み商標: 各国特許庁で「登録」ステータスにある文字商標・図形商標
- 出願中商標: 米国・EU・日本などの主要国で出願受理されている商標(IP Accelerator 経由が条件のケースあり)
日本のブランドオーナーであれば、特許庁での商標登録(または出願)が必要です。海外進出を見越して米国・EU でも商標を取得しているケースが理想形ですが、まずは日本国内の商標で申請を進めるのが現実的です。
商標準備のコスト・期間・進め方についてはAmazon 出品で商標登録は必要かで詳しく解説しています。
2. 商標の名義と Amazon アカウント名義の一致
意外に見落とされやすいのが商標の権利者と Amazon セラーアカウントの名義が一致している必要がある点です。法人で商標を取得しているなら、Amazon セラーアカウントも同じ法人名義でなければなりません。個人事業主と法人で名義が分かれている場合は、商標の譲渡または使用許諾の手続きが先に必要です。
3. ブランドのロゴまたは商品パッケージ画像
ブランドロゴが商品・パッケージ・タグなどに実際に表示されている証拠画像が必要です。実物写真をスマホで撮影したもので問題ありませんが、ロゴが明瞭に読み取れる解像度であることが条件です。
4. 各国マーケットプレイスごとの申請
Brand Registry は国ごとに別管理になっており、日本で登録しても米国 Amazon では別途申請が必要です。多国展開している場合は、各国 Amazon ごとに該当国の商標と紐付けて申請する流れになります。
申請手順 Step by Step

Brand Registry の申請は、Amazon の専用ポータル(brandservices.amazon.co.jp など)から行います。以下、日本 Amazon を例に手順を整理します。
Step 1. Brand Registry アカウント作成
brandservices.amazon.co.jp にアクセスし、既存の Amazon セラーアカウントまたはバイヤーアカウントでサインインします。サインイン後に「ブランドを登録する」ボタンから新規申請を開始します。
Step 2. ブランド情報の入力
申請フォームでは次の情報を入力します。
- ブランド名(商標と完全一致させる)
- 商標登録番号(または出願番号)
- 商標発行国・特許庁
- ブランドロゴの画像アップロード
- 商品の販売対象国・主要カテゴリ
ブランド名は商標と一字一句一致させる必要があります。スペースの有無や大文字小文字の違いでも審査が止まることがあるため、商標証書の表記を正確に転記してください。
Step 3. 商品・配送情報の追加
販売中の商品 ASIN を最大 5 件まで登録できます。ASIN が無い場合は、製造番号・配送経路・パッケージ写真などを追加します。商品がブランド名で実際に Amazon に登録されている状態が望ましいです。
Step 4. ロール(権限)の設定
ブランド内で複数人が Brand Registry を利用する場合、ロールを割り当てます。
- 権利者: 商標の権利者(通常は代表者)
- エージェント: 権利者から委任された運用担当者
- 管理者: Brand Registry 機能を実際に操作する担当者
社内運用フローを事前に整理しておくと、後の権限変更が少なくて済みます。
Step 5. Amazon の審査
申請後、Amazon 側で書類審査が始まります。通常 1〜10 営業日程度で「承認」「追加情報要求」「却下」のいずれかが通知されます。承認されると Brand Registry の管理画面が解禁され、Report a Violation などの機能が即日使えるようになります。
申請時に必要な書類 — チェックリスト
申請プロセスをスムーズに進めるため、事前に揃えておきたい書類をまとめます。
| 書類・情報 | 必須/任意 | 補足 |
|---|---|---|
| 商標登録番号または出願番号 | 必須 | 国内出願なら 7 桁の登録番号、出願中なら出願番号 |
| 商標証書(PDF)またはオンライン照会 URL | 必須 | 特許庁の公開公報 URL でも可 |
| ブランドロゴ画像 | 必須 | 商品・パッケージ・タグに表示された状態が望ましい |
| 商品のパッケージ写真 | 必須 | 複数アングル推奨 |
| 既存の販売 ASIN | 任意 | 5 件まで登録可、無くても申請可 |
| 公式ウェブサイト URL | 任意 | あれば信頼度向上 |
| 法人登記簿謄本(法人の場合) | 必要に応じて | 名義照合で要求されるケース |
特に商標証書とロゴ画像は PDF / JPEG / PNG いずれかで 5MB 以下という制限があります。スキャンサイズが大きすぎる場合は事前に圧縮してください。
よくある却下理由 — 申請が止まる典型パターン

Brand Registry の申請は、書類が揃っていても却下されることがあります。典型的なパターンを 5 つ整理します。
1. 商標の名義と Amazon アカウント名義の不一致
最も多い却下理由です。法人で商標を取っているのに個人セラーアカウントで申請したり、関連会社間で名義が分かれているケースが該当します。名義変更または使用許諾契約の準備が事前に必要です。
2. ブランド名と商標の表記揺れ
商標証書では「KINUI」と全角・半角・スペース有無で表記が異なる場合、Amazon 側のシステムで照合エラーになります。商標証書通りに完全コピーする意識が必要です。
3. ロゴが商品に表示されていない
商品本体・パッケージ・タグのどこにもブランドロゴが表示されていない場合、「ブランドの実在性が確認できない」として却下されます。OEM 商品で自社ロゴを入れていないケースで起こりがちです。
4. 出願中商標で IP Accelerator 経由でない
日本では出願中商標でも申請を受け付けますが、米国 Amazon では Amazon IP Accelerator 経由で出願した商標のみ「出願中での申請」を認めるケースが多数です。各国マーケットプレイスごとに条件を確認してください。
5. 商品 ASIN がブランド名で登録されていない
販売 ASIN を登録する際、商品ページの「ブランド」欄が商標と異なる名前になっていると照合できません。先に商品ページのブランド名を修正してから申請するのが安全です。
却下された場合でも、追加情報を提出して再審査を依頼することは可能です。却下理由のメールには通常、修正すべき項目が明記されています。
登録後にできること — 解禁される機能群
Brand Registry に登録すると、以下の機能群が解禁されます。
| 機能 | 概要 |
|---|---|
| Report a Violation | 商標違反・偽造品の出品通報。Brand Registry の最重要機能 |
| A+ コンテンツ | 商品ページ下部のリッチコンテンツ(画像 + 説明文) |
| ブランドストア | Amazon 内のブランド専用ページ |
| Sponsored Brands 広告 | ブランド名を前面に出した広告フォーマット |
| Brand Analytics | 検索キーワード・購買データの分析機能 |
| Project Zero | 違反出品をブランド側で直接削除(招待制) |
| Transparency | QR コードによる真贋確認プログラム |
| Amazon Vine | レビュー獲得プログラム |
Sponsored Brands や Brand Analytics は売上成長への直接寄与が大きく、登録直後から効果が見えやすい機能です。一方で Project Zero と Transparency は招待制または有料で、登録後すぐ全て使えるわけではない点に注意が必要です。
A+ コンテンツの実務的な作り方はAmazon A+ コンテンツの作り方ガイドで詳しく解説しています。
登録だけでは防げないこと — 限界の理解
Brand Registry に登録すれば偽造品や相乗りが消えるかというと、そうではありません。登録は「通報の入口」を獲得しただけで、日常的な相乗り対応はブランド側で継続的にやり続ける必要があります。
具体的に登録だけでは防げないことを整理します。
- 新規相乗り出品の自動ブロック(Project Zero に進まないと不可)
- 偽造品の物理的な流通停止(Transparency や CCU 連携が必要)
- 違反販売者の再出品(別アカウントで戻ってくる)
Brand Registry 登録だけで止められない領域については、Amazon Brand Registry の限界とはで詳しく整理しています。あわせて Amazon の偽造品対策専門チームについてはAmazon Counterfeit Crimes Unit とはも参考になります。
Brand Registry 登録は通報の入口にすぎません。新規相乗り出品の検知・違反販売者の追跡・通報フローの効率化は、監視ツールで日常的に回す仕組み化が現実的です。
まとめ — 商標準備が 9 割、申請手続きはその後
Amazon Brand Registry の申請プロセスをまとめます。
- 申請の最大の関門は商標。日本国内の登録または出願がスタートライン
- 商標の名義と Amazon アカウント名義の一致が前提条件
- 申請ステップは①アカウント作成②ブランド情報入力③商品・配送情報追加④ロール設定⑤Amazon 審査の 5 段階
- 必要書類は商標証書・ロゴ画像・商品パッケージ写真の 3 点が中心
- 却下理由は「名義不一致」「表記揺れ」「ロゴ未表示」「IP Accelerator 未経由」「ASIN ブランド名不一致」の 5 パターン
- 登録すると Report a Violation・A+ コンテンツ・Brand Analytics・Sponsored Brands などが解禁
- ただし登録だけで偽造品・相乗りは消えない。日常監視と通報運用は継続必須
商標準備が整っていれば、申請手続き自体は1〜2週間で完了します。むしろ難しいのは登録後の運用設計で、Brand Registry 機能をどう活用し、足りない部分を民間監視ツールでどう補うかが、実効性のあるブランド保護の分かれ道になります。


