Shopifyの「チェックアウト追加スクリプト(Additional Scripts)」と checkout.liquid は、アフィリエイト計測・アクセス解析タグ・カスタムロジックを仕込む場所として長年使われてきました。しかしPlusストア向けは2025年8月28日に既に動作停止しており、非Plusストアも2026年8月26日で動作停止します。 さらにScript Editorで動かしていたShopify Scriptsも2026年6月30日に実行が止まります。

この記事では、廃止の正確なスケジュールと、Web Pixel・Checkout Extensibility・Order Webhookという3つの代替手段、アフィリエイト計測をどう移行するかの判断軸までを整理します。 ShopifyでASP連携や自社アフィリエイトを運用している方、自前のJSでコンバージョン計測を仕込んでいる方が対象です。

結論サマリー

  • Plusストアは既に期限切れ。Thank you / Order statusページの checkout.liquid とAdditional Scriptsは2025年8月28日に動作停止済
  • 非Plusストアの期限は2026年8月26日。Thank you / Order statusページのAdditional ScriptsとScriptTagが動かなくなる
  • Shopify Scriptsは2026年6月30日に実行停止(Plus限定機能、Shopify Functionsへの移行必須)
  • 代替は3つ: (1) Web Pixel=全プラン対応のクライアント側計測、(2) Checkout Extensibility=UI差し込み(大半がPlus限定)、(3) Order Webhook=サーバーサイド計測
  • アフィリエイト計測は「Web Pixel + Order Webhookの二重化」が実質の正解。UpPromoteなどアプリはすでにWeb Pixel方式に移行済みなので、アプリ利用なら設定更新のみで済む
  • 自前実装は非Plusでも可能だが運用コストは上がる。複数アフィリエイター管理・不正検知まで含むならアプリ利用が合理的

チェックアウト追加スクリプトとは — 何がどこに書かれていた機能か

Shopifyストアのチェックアウト画面。追加スクリプト機能で計測タグを仕込んできた舞台

「チェックアウト追加スクリプト」は、Shopifyの管理画面で Settings > Checkout の「Additional Scripts」欄に任意のJavaScript/HTMLを貼り付け、チェックアウト画面や注文完了ページで実行できる機能でした。あわせてPlus向けには checkout.liquid テーマファイルが用意されており、チェックアウトのHTML/CSS/JSを自由に書き換えられました。

主な用途は次のようなものでした。

  • コンバージョン計測タグ: Googleアナリティクス、Facebook Pixel、アフィリエイトASPのサンクスタグ
  • カスタム動線: アップセル・ダウンセル、注文完了後のクーポンポップアップ
  • 独自ロジック: Cookieのアフィリエイトパラメータ読み取り、カスタムAPIコール
  • UI調整: チェックアウト画面のテキスト差し替え、CSS上書き(Plus限定)

「Shopifyにタグやスクリプトを仕込むならここ」という定番の場所で、アフィリエイトアプリやASPのサンクスタグも、かつてはこの領域にScriptTag APIまたはAdditional Scriptsとして自動挿入される実装が主流でした。

なぜ廃止されるのか

Shopifyが2023〜2024年にかけて打ち出したのが Checkout Extensibility です。目的は、任意JSの直書きが引き起こしていた以下の問題を構造的に解決することでした。

  • セキュリティリスク: チェックアウト画面に任意のJSが動くとカード情報・個人情報を盗む攻撃が成立し得る
  • パフォーマンス劣化: 複数アプリが同時にscriptを差し込むとロードが重くなりCV率が下がる
  • モバイル・One-page Checkoutとの非互換: Liquid追記はShopifyの新UIが出るたびに壊れる

新体系では、UIは Checkout UI Extensions(サンドボックス内のReact/Preact的コンポーネント)、ビジネスロジックは Shopify Functions(WASM)、計測は Web Pixels API に分離されます。任意JSは原則として動かせなくなり、Shopifyが用意したAPI経由でのみ拡張できる世界観です。

廃止のスケジュール — 既に過ぎた期日と残っている期日

まずは確定している日付を時系列で押さえておきます。自分のストアがPlusか非Plusかで期日が大きく違う点に注意してください。

期日対象内容
2024年8月13日Pluscheckout.liquid の Information / Shipping / Payment ステップのカスタマイズが停止
2025年2月1日全ストアScriptTag APIによる Thank you / Order status ページへの新規ScriptTag作成が不可に
2025年8月28日PlusThank you / Order statusページの checkout.liquid が動作停止・Additional Scripts欄がview-only化・既存ScriptTagの動作も停止
2026年4月15日PlusShopify Scripts / Script Editorの編集・公開が不可に(実行は継続)
2026年6月30日PlusShopify Scriptsの実行が完全停止
2026年8月26日非PlusThank you / Order statusページのAdditional Scripts・ScriptTagが動作停止

(出典: Shopify Changelog・Help Center 各ページ)

2026年4月時点で残っている主要な期日は、非Plusストアの「2026年8月26日」とShopify Scriptsの「2026年6月30日」の2つです。非Plusストアで何もしていない場合、残り約4カ月で移行する必要があります。

自動アップグレードの扱い

Shopifyは未移行・カスタマイズなしのストアから順に、自動アップグレードを実施しています。Plus向けでは2026年1月以降に開始、該当ストアには30日前通知が送られる運用です。「気がついたらThank youページが変わっていた」というパターンはこれに相当します。

カスタマイズしているストアは自動アップグレード対象外となるため、アプリやテーマでチェックアウトをいじっている場合は自分で期日までに移行を完了させる必要があります

影響を受ける機能 — 何が動かなくなるか

古いコードを書き換える開発のイメージ。Additional Scriptsから新APIへの移行作業そのもの

期日を越えた時点で、具体的に何が止まるのかを整理します。

アフィリエイト計測タグ

ASPのサンクスタグ、UpPromote等のアフィリエイトアプリがScriptTagで挿入していたコード、自前で書いたCookieからのaffiliate ID読み取り → ピクセル発火のJS、いずれもそのままでは動作しません。計測は「売上が立っているのに計測されない」という最悪の形で壊れるため、気づくのが遅れがちです。

アクセス解析・マーケティングタグ

GA4、Google Ads、Meta(Facebook)Pixel、Pinterest Tag、X(Twitter)Pixel など。公式コネクタやShopifyのCustomer Events経由で設定していればWeb Pixelに自動移行されるケースが多いですが、Additional Scriptsに直書きしていたタグは手動で移行が必要です。

カスタムロジック

チェックアウト画面でのアップセル表示、クーポンポップアップ、サンクスページでのリファラルプログラム紹介など、Liquidにif文+JSで仕込んでいたUIはすべて再実装対象です。非PlusはThank you / Order statusページのUI Extensionに、PlusはCheckout UI Extension全般に移行します。

Shopify Scripts(Plus限定)

配送料の動的変更、ラインアイテムスクリプト、ペイメントメソッドスクリプトなど。2026年6月30日以降、すべて動作停止します。Shopify Functionsへの移植には Rust / TypeScript + WASM の知識が必要で、学習コストは従来より高めです。

代替手段①: Web Pixel — 全プラン対応の計測基盤

Webアクセス解析やピクセル計測のイメージ。Web Pixelがこれからの計測の中心になる

最初に押さえるべきはWeb Pixelです。アフィリエイト計測・アクセス解析で最も使う頻度が高い代替手段で、全プランで利用可能な点が重要です。

Web Pixelでできること

Shopifyの管理画面「Settings > Customer events」から「Custom pixel」を追加し、JavaScriptで標準イベントを購読します。利用できるイベントは次のようなものです。

  • checkout_completed — 注文完了(コンバージョンの主イベント)
  • checkout_started — チェックアウト画面に入った
  • page_viewed / product_viewed — ページ・商品閲覧
  • cart_viewed / product_added_to_cart — カート関連
  • search_submitted — サイト内検索

購読したイベントから注文ID・金額・商品情報などを取り出し、外部の計測サーバーやタグマネージャに送信する構成になります。

Web Pixelの制約 — これを知らずに移行すると詰む

Web Pixelは lax sandbox(iframe allow-scripts allow-forms)内で動作します。これにより従来のAdditional Scriptsではできていた以下のことが軒並み不可能です。

  • トップフレームのDOM操作(ボタンの見た目を変える、モーダル描画、テキスト差し替え)
  • window.location へのアクセス・遷移制御
  • document.cookie への直接アクセス(Shopifyが提供するAPIでのみ限定的に可能)
  • Cookieから読み取ったアフィリエイトパラメータをチェックアウト画面のhidden fieldに書き込む、といった古典的なトリック

クッキー関連はShopifyの Customer Privacy API 経由で扱う設計に切り替わっており、同意状況に応じてPixelへのデータが minimal / full に自動で変換されます。同意を拒否したユーザーのメール・電話番号などは意図的に落とされる仕様です。

アフィリエイト計測用途での位置づけ

「クリック→コンバージョン」のトラッキングで必要な情報(注文ID、金額、通貨、タイミング)は問題なく取れます。一方、クリック時にアフィリエイトIDをCookieに保存する処理はWeb Pixel内では不可能なので、その部分はストアフロントのテーマ側で行う、あるいはShopifyのCart Attributes(cart.attributes)にクリック段階で書き込む実装に変える必要があります。

発火漏れ問題: checkout_completed が一部ケースで発火しないという既知の不整合も報告されています。単独では信頼性に不安が残るため、次のOrder Webhookとの併用が推奨されています。

代替手段②: Checkout Extensibility — UI差し込みの新体系

Checkout Extensibilityは、主に UI拡張ビジネスロジック拡張 の2系統から構成されます。

Checkout UI Extensions

従来 checkout.liquid に書いていたUIカスタマイズ(バナー、テキスト追加、カスタムフィールド等)の置き換えです。

  • 実装はReact/Preactライクな独自DSL(@shopify/ui-extensions)で、Shopify CLIとPartner Dashboardでアプリを作成してから配布する形になる
  • サンドボックス(Web Worker)内で動作するためDOM直操作は不可、Shopifyが用意したコンポーネントでのみUIを構成する
  • 学習コスト: React経験があれば導入は早いが、「任意のHTMLが書けない」制約に慣れるまで時間がかかる

プラン制限が厄介です。

  • Information / Shipping / Payment 各ステップのUI ExtensionはPlus限定
  • Thank you / Order statusページのUI Extensionは全プランで利用可能

非Plusセラーにとっての現実は、「Thank youページ以外のUIカスタマイズは諦める」か「Plusへのアップグレードを検討する」かの二択になります。

Shopify Functions

Shopify Scriptsの後継で、割引・配送・決済ルール・カートトランスフォームを WASM ベースで記述します。言語はRust / JavaScript / TypeScript が公式サポートで、Rust が最も軽量・高速ですが Shopify CLI でプロジェクトを作り、Partner Dashboardに登録して配布する流れはUI Extensionsと同じです。

Functionsの大半もPlus向け機能で、非Plusストアが自前で書き換える必要がある対象は限定的です。

代替手段③: Order Webhook — サーバーサイド計測の本命

Webhookは、Shopifyが注文イベントを自社サーバーに通知する仕組みで、以下の注文イベントを購読できます

  • orders/create — 注文作成時
  • orders/paid — 支払い完了時
  • orders/updated — 注文更新時(返金・キャンセル等)
  • orders/fulfilled — フルフィルメント完了時
  • orders/cancelled — 注文キャンセル時

Webhookペイロードには注文ID・金額・商品・顧客情報・Cart Attributes などが含まれ、ブラウザの状態に依存しないためロスが出にくいのが最大の強みです。

アフィリエイト計測でWebhookを使うパターン

標準的な構成は次のようになります。

  1. ストアフロント(商品ページや theme.liquid)でURLクエリから ?afid=xxx 等のアフィリエイトIDを読み取る
  2. Cart Attributes(cart.attributes.afid)に書き込む(Shopifyの /cart/update.js APIを使う)
  3. 注文が確定すると、Webhookペイロードの note_attributes としてそのIDが自社サーバーに届く
  4. 自社サーバーで orders/paid を購読し、note_attributes から afid を取り出して成果データを記録

Impact Radiusなど主要ASPの多くもこのパターンを前提にしています(irclickidnote_attributes 経由)。

Webhookだけでは足りない部分

  • サーバー運用が必須: 受信エンドポイント、署名検証(HMAC)、リトライと冪等処理を自前で実装する必要があります
  • UI側に情報を返せない: サンクスページに「報酬が発生しました」などの表示を出すにはWeb PixelやUI Extensionとの併用が必要
  • 返金・キャンセル時の調整: 後から orders/updated で戻ってくるイベントを拾って成果を取り消す処理も必要

アフィリエイトアプリの対応状況 — UpPromoteとAffitch

ここまで技術的な代替手段を見てきましたが、既存アプリを使っている場合の多くは「アプリ側が既に移行済み」なので、マーチャントの作業は設定更新だけで済みます。代表的なアプリについて整理しておきます。

UpPromote — Web Pixel方式に移行済み

UpPromoteは2025年5月にWeb Pixel方式への移行を告知し、2025年6月23日でScriptTag版の計測を終了しています。以降はUpPromote側が提供する「UpPromote essentials」App Embedを有効化し、「Settings > Integration > Third-party tracking」で新しいWeb Pixelコードを配置する運用です。

マーチャント側の作業は次の通りです。

  • App Embedの有効化(テーマカスタマイザーで自動的にオンになる場合もある)
  • Web Pixelコードの配置確認
  • Thank youページが新仕様(非Plusは2026年8月26日以降)にアップグレードされているかの確認

具体的な導入・運用手順はUpPromoteの使い方ガイドで解説しています。

Post-purchase popup機能は2025年1月21日に削除済みで、代わりに「Post-purchase signup」機能が提供されています。サンクスページ上でアフィリエイター登録を促す導線を使っていた場合は、この代替機能への切り替えが必要です。

Affitch — 対応状況は公式情報を確認

Affitchは日本製のShopifyアフィリエイトアプリで、紹介リンクとクーポンコードベースでコンバージョン計測する仕組みです。2026年4月時点で、Shopify App Storeページ上では「Works with: Checkout, Shopify Flow, Shopify Admin」との記載はあるものの、Web Pixels / Checkout Extensibility対応の明示的な記載は確認できませんでした

アプリ内ダッシュボードや公式サイトで最新の対応状況を確認するか、提供元に直接問い合わせるのが確実です。Affitch自体の機能・使い方はAffitchの使い方ガイドにまとめています。

詳細を見る →

アプリを選ぶ際のチェックポイント

Shopifyアフィリエイトアプリを新規に選ぶ場合、2026年以降は次の点を必ず確認してください。

  • Web Pixels / Checkout Extensibilityへの対応が公式に明記されているか
  • ScriptTagからの移行が完了しているか(移行中のアプリは計測漏れリスクあり)
  • App EmbedやCustom Pixelの設定手順が公式ドキュメントに整備されているか

自前実装 vs アプリ利用 — 判断軸

最後に、「自前で計測を組むか、アプリに任せるか」の判断軸を整理します。

自前実装のコスト構造

  • 学習コスト: Checkout UI Extensionsは React/Preact ライクな独自DSL + Shopify CLI + Partner Dashboardでのアプリ作成が必須。Functionsは加えてWASM/Rustの理解が要る
  • サーバー運用: Webhook受信サーバーを自社で運用、署名検証・リトライ・冪等処理を実装
  • 継続的なメンテ: Shopify APIバージョンは定期的に更新されるため、追従コストが発生

アプリ利用のコスト構造

  • 月額費用: 売上規模・アフィリエイター数に応じてプラン別
  • カスタマイズの制約: アプリが提供する範囲内での機能に限定される
  • 設定・運用の学習: UI操作とアプリ固有の用語を覚える程度

判断マトリクス

状況おすすめ
アフィリエイター5人以下・単純なクリック→CV計測のみ自前実装(Web Pixel + Order Webhook)
アフィリエイター10人以上・支払い管理まで必要アプリ利用(UpPromote / Affitch など)
Plus運用・ブランド独自のUI要件ありUI Extensions + アプリ併用
非Plus・サーバー運用を避けたいアプリ一本化

自前とアプリの最終判断は、アフィリエイト事業の立て方次第で大きく変わります。ASP経由で動かすのか、自社アフィリエイトとして運用するのかで必要な機能がまったく違うため、事前整理には自社アフィリエイトとASPの違いもあわせて参考にしてみてください。

まとめ — いつまでに何をすべきか

  • Plusストア: 2025年8月28日は既に過ぎています。まだ移行できていない場合は、計測・UI全般を今すぐ確認してください。Shopify Scriptsを使っているなら2026年6月30日までにFunctions移植が必要
  • 非Plusストア: 2026年8月26日が期限。Thank you / Order statusページのAdditional Scripts・ScriptTagで動いている計測タグとカスタムロジックを、Web PixelとUI Extensionに移行
  • アフィリエイト計測: アプリ利用中ならアプリ側の新設定に切り替えるだけで完了するケースが多い。自前実装なら「Web Pixel + Order Webhookの二重化」が安定構成

廃止期日が近づくほど移行サポートは混雑します。期日から逆算して、少なくとも1〜2カ月の余裕を持って着手するのが現実的です。