Amazon Brand Analytics(以下ABA)は、ブランド登録済みセラーだけが使えるAmazon公式の無料分析ツールです。検索頻度ランクや上位3商品のクリックシェア・コンバージョンシェアといった、外部ツールでは取得できないAmazon内部データを直接確認できる唯一の手段ですが、英語UIのスクリーンショットしか見つからない、レポート名が抽象的でどれを見ればいいか分からないといった理由で「アクセスはできるが使いこなせていない」状態に陥っているセラーは少なくありません。
**この記事では、ABAの利用条件・アクセス手順・主要4レポート(Amazon Search Terms / Top Search Terms / Repeat Purchase Behavior / Item Comparison and Alternate Purchase)の読み方を、日本語UIベースで一通り解説します。**さらに、ABA単体では届かない検索ボリューム数値や競合ASIN単位の深掘りをHelium10やセラースプライトで補完するロジックも紹介します。
ブランド登録は完了したがABAをほぼ使っていないメーカー担当者・D2Cブランド運営者向けの内容です。
Amazon Brand Analyticsとは
Amazon Brand Analyticsは、Amazonに自社ブランドを登録(Brand Registry)したセラーだけが Seller Central から無料で利用できる分析ツールです。Amazon自身が保有する内部データ(実際の検索クエリ・クリック先ASIN・購入後の再購買行動など)を、ブランドオーナーに開放するという位置づけで提供されています。

ABAでは主に以下4つのレポートが提供されています。
- Amazon Search Terms Report: Amazon内で実際に検索されているキーワードの頻度ランクと、そのキーワードでクリック・購入されている上位3商品
- Top Search Terms: 自社ブランド配下のASINに紐づく主要検索キーワードと指標
- Repeat Purchase Behavior: 自社商品のリピート購入率・期間別購買傾向
- Item Comparison and Alternate Purchase: 自社ASINと一緒に比較された/代替購入された商品
外部ツール(Helium10、セラースプライト、Keepa等)が独自のクローラやAmazon広告APIを推定して算出する数値とは異なり、ABAはAmazon自身の生データに最も近い情報を提供している点が決定的な強みです。
ABAが解決する課題
外部ツールの検索ボリューム推定値は、ツール間で2〜3倍の乖離が発生することも珍しくありません。新規KWを攻めるべきか判断するとき、推定値だけを根拠にすると過大投資になりやすいのが実情です。
ABAの**Search Frequency Rank(検索頻度ランク)**は、Amazon内での検索回数を1位・2位・3位…と順位化した指標で、絶対値ではないものの「Amazon自身がこのKWをどれくらい重要視しているか」の最も信頼できる情報源になります。外部ツールの推定値と突き合わせることで、誤差を補正した上での意思決定が可能になります。
利用条件 — Brand Registry連携が必須
ABAを利用するには、以下3つの条件を満たす必要があります。
- Amazon Brand Registry(ブランド登録)の完了: 登録商標、または出願中の商標があり、Amazon側でブランドオーナー認定を受けている状態
- Seller Centralアカウントとブランドの紐付け: 登録時のメインユーザーアカウントへの自動紐付けに加え、副ユーザーには個別に閲覧権限を付与する必要があります
- Brand Owner権限: 副ユーザーに権限付与する場合、「ユーザー権限」画面で「Brand Analytics」項目に「閲覧」または「管理」のチェックを入れる
Brand Registry自体の申請手順は別記事 Brand Registryの登録上限と注意点 で解説しているため、まだ申請が済んでいない場合は先にそちらを確認してください。
よくある「メニューが表示されない」原因
Brand Registryは完了しているのに Seller Central メニューに「ブランド分析」が表示されない場合、原因は以下のいずれかです。
- 権限設定の漏れ: メインユーザーは自動付与されますが、副ユーザーは「設定 > ユーザー権限」から「Brand Analytics」にチェックを入れる必要があります
- ブランド名のスペル違いで紐付けが完了していない: 商標登録時の表記とSeller Central側のブランド入力に微差がある場合、内部的に別ブランド扱いになるケースがあります
- 新規申請から72時間以内: 認定直後はデータ反映前で、ABAメニュー自体が出ないか、出てもデータが空の状態になります
72時間経過しても表示されない場合は、Amazonセラーサポートにブランドオーナー認定状態の確認を依頼するのが確実です。
アクセス手順 — Seller Centralからの導線
Seller CentralからABAにアクセスする手順は以下の通りです。
- Seller Centralにログイン(https://sellercentral.amazon.co.jp)
- 上部メニュー「ブランド」をクリック
- ドロップダウンから「ブランド分析」を選択
- 左サイドバーに4つのレポート種別が表示される

初回アクセス時に「ブランドを選択」のダイアログが出る場合があります。複数ブランドを登録しているセラーは、解析対象のブランドを選択してから各レポートに進む流れです。
マーケットプレイスごとの切り替え
ABAはマーケットプレイス単位でデータを保持しています。Amazon.co.jpのABAでは日本国内の検索データしか参照できないため、米国向け展開も行っているブランドは Seller Central の「マーケットプレイス切り替え」から Amazon.com に移動した上で、再度「ブランド > ブランド分析」を開く必要があります。
複数マーケットプレイスのデータを横断比較したい場合、ABAのCSV出力を別途スプレッドシートで突き合わせるか、後述するHelium10のCerebroを使うのが現実的です。
主要レポート①: Amazon Search Terms Report
「Amazon Search Terms Report(検索頻度ランク)」は、ABAの中で最も使用頻度の高いレポートです。Amazon内で検索されたキーワードを検索頻度の高い順に並べ、各KWでクリック・購入されている上位3商品(ASIN・クリックシェア・コンバージョンシェア)を表示します。
主要列の読み方
レポートに表示される主要列は以下の通りです。
- 検索キーワード: ユーザーが実際に入力した検索語
- 検索頻度ランク: そのKWの検索回数を順位化したもの(1位が最も検索されている)
- クリック商品 #1〜#3: そのKWでクリック数が多かった上位3商品のASIN
- クリックシェア: 上位3商品それぞれのクリック比率(合計100%にはなりません)
- コンバージョンシェア: 上位3商品それぞれの購入比率
検索頻度ランクは絶対値ではなく相対順位なので、たとえば「ランク10万位以内」のKWは比較的検索ボリュームがある、「ランク100万位以下」のKWはニッチ、といった感覚で扱います。Amazon全体では数億単位のKWが収録されているため、ランク自体の数値は他ツールの月間検索ボリュームと突き合わせて温度感を測るのが実務的です。
実務での使い方
このレポートを使う実務シナリオとしては以下が代表的です。
- 新規ASIN投入前のKW選定: 自社カテゴリの中堅KW(ランク10万〜50万位)から、上位3商品のクリックシェアが分散しているKWを優先(独占されているKWは新規参入が厳しい)
- 競合ASINの集客KW逆算: 上位3商品にライバルのASINが入っているKWを抽出すると、競合がどんな検索語から流入しているかが見える
- 広告配信KWの優先順位付け: クリックシェアが集中しているKW(特定ブランドが寡占)は広告でも入札競争が激しい→分散しているKWに広告予算を寄せる方が費用対効果が高いことが多い

Helium10 / セラースプライトとの併用
ABAの検索頻度ランクは順位情報のみで、推定検索ボリュームは提供されません。月間検索数の数値を知るには、ABAから抽出したKWリストをHelium10のCerebroやセラースプライトの逆引きキーワード機能に投入して突き合わせる流れが定石です。Cerebroの使い方は Helium10 Cerebroの使い方ガイド を参照してください。
主要レポート②: Top Search Terms
「Top Search Terms(トップ検索ワード)」は、自社ブランド配下のASINに対して直接結びついた検索キーワードを返すレポートです。Amazon Search Terms Reportが「Amazon全体の検索トレンド」を見る用途なのに対し、Top Search Termsは「自社ASINがどんなKWで見られているか」を見る用途です。
表示される指標
- 検索キーワード: 自社ASINに紐づくKW
- インプレッションシェア: そのKWの検索結果で自社ASINが表示された割合
- クリックシェア: 表示されたうちクリックされた割合
このレポートは、自社の現状ポジションを定点観測するのに向いています。インプレッションシェアが高いのにクリックシェアが低いKWがあれば、検索結果でのサムネイル・タイトル・価格といった「見せ方」に改善余地があるサインです。逆にインプレッション自体が低ければ、KWへのSEO最適化や広告配信を強化する判断ができます。
主要レポート③: Repeat Purchase Behavior
「Repeat Purchase Behavior(リピート購入分析)」は、自社ASINが直近12ヶ月でどれくらいリピート購入されたかを集計するレポートです。
主要指標
- ユニーク顧客数: 直近12ヶ月で購入したユニーク顧客の総数
- リピート顧客数: 同期間内で2回以上購入した顧客数
- リピート率: リピート顧客数 ÷ ユニーク顧客数
- リピート購入比率: リピート購入回数 ÷ 総購入回数

実務での使い方
リピート率の高いASIN(消耗品・サプリ・コスメ等)は、定期おトク便の活用やバンドル販売で顧客生涯価値を伸ばせる余地があります。一方、リピート率がほぼゼロの単発購入型商品(家電・家具)は、新規獲得効率を最優先にする戦略になります。
ASIN別にリピート率を一覧化すると、自社ラインナップの「育てるべき定番」と「キャンペーン依存の単発」が分類でき、広告予算配分や在庫戦略の意思決定に直結します。
主要レポート④: Item Comparison and Alternate Purchase
「Item Comparison and Alternate Purchase(比較購入・代替購入分析)」は、自社ASINと一緒に比較されたASIN、または自社ASINを見たあとに代わりに購入されたASIN(競合)を表示します。
表示される指標
- 比較購入レポート: 同一セッション内で比較された他社ASIN(同時に閲覧されたASIN)
- 代替購入レポート: 自社ASINを見たユーザーが結局購入した別ASIN
代替購入レポートに頻出する他社ASINが、自社の本当の競合です。カテゴリの広い検索結果ではなく、ユーザーが購入直前に天秤にかけた商品が分かるため、価格・レビュー数・キーワード設計の改善優先順位を決める根拠として極めて精度が高い情報源です。
実務での使い方
代替購入で自社が負けているASINを抽出し、価格差・レビュー数差・検索結果での見え方差を要素分解していくと、改善ポイントが明確になります。例えば「価格は同等だがレビュー数で2倍負けている」のであればレビュー獲得施策、「レビューは互角だが価格で15%負けている」のであれば価格戦略の見直し、というように打ち手を絞り込めます。
Helium10 / セラースプライトで補完すべき領域
ABAは強力な公式データを提供しますが、以下の領域では外部ツールが必要です。
ABAの限界
- 絶対的な検索ボリュームが取れない: 検索頻度ランクのみで、月間検索数の推定値は提供されない
- 競合ブランド全体の俯瞰ができない: 自社ブランド配下のASIN単位での分析が中心
- キーワードのバリエーション提案がない: 関連語・周辺語の自動展開機能がない
- 過去データの保持期間が限定的: 一部レポートは過去13ヶ月程度の期間のみ
- 海外マーケットプレイス横断ができない: マーケットプレイス単位でしかデータを見られない
Helium10 / セラースプライトで補完できる領域
| 補完領域 | 推奨ツール | 該当機能 |
|---|---|---|
| 月間検索ボリューム推定 | Helium10 / セラースプライト | Cerebro / 逆引きキーワード |
| 関連KWの自動展開 | Helium10 | Magnet(順引きKWツール) |
| 競合ASIN単位の深掘り | Helium10 / セラースプライト | Xray / 商品リサーチ |
| 過去履歴データ | Keepa | 価格・売上ランク履歴 |
| 海外マーケットプレイス横断 | Helium10 | 全マーケットプレイス対応 |
特にKW分析の文脈では、ABAで「Amazon内検索頻度ランクのトレンド」を掴み、Helium10 Cerebroで「具体的な検索ボリューム数値と競合密度」を補完するのが王道の組み合わせです。
ABAと外部ツールの併用フローや、KW数値の取得精度をさらに比較したい場合は、別記事 Amazonキーワード調査ツール6選比較 と Brand AnalyticsとHelium10の違い・使い分け も参考にしてください。SQP(サーチクエリパフォーマンス)レポートの詳細は サーチクエリパフォーマンス(SQP)の見方 でまとめています。
まとめ
Amazon Brand Analyticsは、Amazon公式の内部データに最も近い情報を無料で提供する強力な分析ツールです。一方で、検索ボリュームの絶対値や競合ASIN単位の深掘りといった用途では限界があるため、Helium10やセラースプライトとの併用で初めて意思決定の根拠を揃えられます。
ABAを使いこなすための優先順位としては以下が現実的です。
- Brand Registry完了 → Seller Centralの「ブランド > ブランド分析」メニュー有効化
- Search Terms Reportで自社カテゴリのKW一覧を取得
- Helium10 Cerebroで月間検索ボリューム推定値を補完
- Top Search Termsで自社ASINの定点観測
- Item Comparison and Alternate Purchaseで真の競合ASINを特定
- Repeat Purchase Behaviorで戦略タイプ(リピート型 vs 単発型)を分類
「ABAのメニューを開いたが何を見ればいいか分からない」状態を脱するには、まずSearch Terms Reportで現状を可視化し、外部ツールで足りない数値を補完する流れに慣れるのが近道です。
よくある質問
Q1. Amazon Brand Analyticsは有料ですか?
無料です。ただしAmazon Brand Registry(ブランド登録)の完了が前提で、Brand Registry申請には登録商標または出願中の商標が必要なため、商標取得費用が事実上の前提コストになります。
Q2. Brand Registryを完了したのにABAメニューが表示されません
副ユーザーアカウントの場合は、メインユーザーが「設定 > ユーザー権限」からBrand Analyticsの閲覧/管理権限を付与する必要があります。メインユーザーで表示されない場合は、ブランド名のスペル違いやAmazon側の認定処理待ち(72時間以内)の可能性があり、それ以降も解決しなければセラーサポートに認定状態の確認を依頼してください。
Q3. ABAの検索頻度ランクは月間検索ボリュームに換算できますか?
公式には換算式は公開されていません。実務上はHelium10 Cerebroやセラースプライトの推定検索ボリュームと突き合わせて、ランクの相場感(例: ランク10万位以下=月間数千〜数万回検索される中堅KW)を経験則で掴む流れが一般的です。
Q4. Top Search TermsとAmazon Search Terms Reportの違いは何ですか?
Top Search Termsは「自社ブランド配下のASINに紐づくKW」を中心に、インプレッションシェア・クリックシェアといった自社視点の指標を返します。Amazon Search Terms Reportは「Amazon全体の検索KW」をランクと上位3商品(他社含む)で返すため、競合分析や新規KW開拓に向いています。
Q5. ABAのデータをエクスポートできますか?
各レポートにCSVダウンロード機能があり、データを外部スプレッドシートやBIツールに取り込んで分析できます。Item Comparison and Alternate Purchaseのデータは、Helium10やセラースプライトの逆引き機能の入力としても活用しやすく、社内BIにストックして時系列で追跡する運用も推奨です。


