Amazonのサーチクエリパフォーマンス(Search Query Performance、以下SQP)は、自社ASINと検索クエリの組み合わせごとに、インプレッション・クリック・購入の各シェアを表示する比較的新しいレポートです。Brand Analyticsの一部として2024年以降に統合・拡張され、検索KW単位でのファネル分析が可能になりました。一方で、日本語UIベースの解説記事はほとんど見当たらず、「メニューにあるが何の数値なのかピンと来ない」状態のセラーが多いのが現状です。

この記事では、SQPの位置づけ・主要指標(インプレッション/クリック/購入の各シェア)の読み方・KWごとの自社ポジション診断・Helium10 Cerebroで深掘りする実務フローまで解説します。

すでにBrand Analyticsの基本レポート(Brand Analytics使い方完全ガイド)は把握していて、SQPでさらに踏み込んだ分析をしたいメーカー担当者・D2Cブランド運営者向けの内容です。

サーチクエリパフォーマンスとは

SQPは、特定の検索クエリと自社ASINの組み合わせに対して、検索ファネルの各段階(表示→クリック→購入)でのシェアを示すレポートです。Brand Analyticsの「ブランド分析」メニュー内に「サーチクエリパフォーマンス」として配置されています。

検索パフォーマンス分析のイメージ

従来のAmazon Search Terms Reportが「Amazon全体でのKWランキングと上位3商品」を示すマクロ視点のレポートなのに対し、SQPは「自社ASINがそのKWでファネル各段階でどれくらいのシェアを取れているか」というミクロ視点のレポートです。

SQPで分かる代表的な問い

  • 自社ASINは特定KWの検索結果でどれくらい表示されているか(インプレッションシェア)
  • 表示されたうちどれくらいクリックされているか(クリックシェア)
  • クリックされたうちどれくらい購入されているか(購入シェア)
  • KWごとの自社ファネル弱点はどこか(表示不足 / 見せ方不足 / 商品魅力不足)

これらの問いに対する答えを、Amazon自身の生データに基づいて取得できる点がSQPの最大の強みです。

Brand Analyticsとの位置関係

SQPはBrand Analyticsの一部レポートとして提供されているため、利用条件はBrand Analyticsと同じです。具体的には Amazon Brand Registry(ブランド登録)の完了 + Seller Centralでの該当ブランドへのアクセス権限が必須で、この2つがそろっていればABAメニューと同列にSQPが表示されます。

ABAの主要レポート群(Search Terms / Top Search Terms / Repeat Purchase / Item Comparison)とSQPの関係を整理すると、以下のような分業構造になっています。

レポート視点主な用途
Search Terms Reportマクロ(Amazon全体)KWランキングと上位3商品を把握
Top Search Terms中間(ブランド配下)自社ブランド主要KWの定点観測
SQPミクロ(KW×ASIN)KWごとのファネル各段階シェア診断
Repeat Purchase顧客行動リピート率と顧客生涯価値の分析
Item Comparison競合分析比較・代替購入された他社ASINの特定

ABAの基本レポートで全体像を掴んだ後、SQPでKW×ASIN単位の詳細診断に入る、というのが推奨される利用順序です。

アクセス方法

SQPへのアクセス手順は以下の通りです。

  1. Seller Centralにログイン(https://sellercentral.amazon.co.jp
  2. 上部メニュー「ブランド」をクリック
  3. ドロップダウンから「ブランド分析」を選択
  4. 左サイドバー、または上部タブで「サーチクエリパフォーマンス」を選択
  5. ブランド・期間・対象ASINを指定してレポートを生成

期間は週次・月次・四半期・年次から選択でき、最大26週間程度まで遡ったデータを取得可能です。

ブランドビュー vs ASINビュー

SQPには2つの集計単位があります。

  • ブランドビュー: ブランド配下の全ASINを合算したファネルシェア
  • ASINビュー: 特定ASINに絞ったファネルシェア

新規KW開拓やブランド全体のSEO戦略にはブランドビュー、特定ASINの売上が伸び悩む原因分析にはASINビュー、と用途を使い分けるのが基本です。

主要指標 — インプレッション/クリック/購入の3シェア

SQPの中核指標は、検索ファネルの各段階に対応する3つのシェアです。

インプレッションシェア(Search Query Impression Share)

そのKWの検索結果総表示回数のうち、自社ASINが表示された割合です。例えばインプレッションシェアが12%なら、そのKWの検索結果に100回中12回は自社ASINが表示されているということになります。

低い場合の典型的原因は以下です。

  • リスティングのKW最適化不足(タイトル・箇条書き・バックエンドKWに該当語が入っていない)
  • 在庫切れやアカウント健全性の問題でAmazon側のランキング判定が下がっている
  • 広告配信が当該KWに当たっていない、または入札が弱い

クリックシェア(Search Query Click Share)

そのKWの全クリック数のうち、自社ASINがクリックされた割合です。インプレッションシェアと比較することで、見せ方の課題が分かります。

クリックシェアがインプレッションシェアより明確に低い場合(例: インプ12% / クリック5%)、商品ページに到達する前のサムネイル・タイトル・価格・レビュー数で競合に負けているサインです。

購入シェア(Search Query Purchase Share)

そのKWで発生した全購入数のうち、自社ASINが購入された割合です。クリックシェアと比較することで、商品ページ自体の課題が分かります。

クリックシェアが取れているのに購入シェアが下がる場合(例: クリック15% / 購入5%)、商品ページの詳細説明・A+コンテンツ・画像・レビュー内容に改善余地があります。

インプ/クリック/購入の各シェアイメージ

3シェアの組み合わせで分かる弱点

3つのシェアを横並びで見ることで、KW単位でのファネル弱点を特定できます。

パターンインプクリック購入弱点
KW非露出型リスティング最適化+広告強化
見せ方負けサムネイル・タイトル・価格
商品ページ負け詳細説明・A+・レビュー
健全(伸び余地小)上限近く(他KWへ予算配分)

このマトリクスでKWを分類すれば、どこに改善投資をすべきかが明確になります。

使い方①: 自社ASINの検索シェア把握

新規ASIN投入後、最初の3ヶ月程度はSQPで「狙ったKWに対するインプレッションシェア」を週次で追跡することが基本です。

  • 1週目〜2週目: インプレッションシェアがほぼゼロ(Amazonのランキング判定に時間がかかる)
  • 3〜4週目: 当該KWでの初回露出が始まり、シェアが少しずつ上昇
  • 6〜8週目: 広告配信の効果でクリック・購入のシェアにも反映され始める

このタイムラインから外れている場合(例: 8週経過してもインプレッションシェアが1%未満)、リスティングのKW設計に根本的な問題がある可能性が高く、タイトル・箇条書き・バックエンドKWの再構築を検討する根拠になります。

使い方②: 競合に流れているKWの特定

既存ASINで売上が頭打ちのとき、SQPで「インプレッションシェアは取れているのにクリック・購入シェアが落ちているKW」を抽出すると、競合に流れているKWが見えてきます。

抽出後の打ち手は以下が定番です。

  • クリックシェア負け: 検索結果サムネイルを再撮影、タイトルを訴求軸の強い表現に書き換え、価格戦略の見直し(クーポン適用、定期割引)
  • 購入シェア負け: 商品ページの詳細説明・A+コンテンツ・画像枚数・レビュー内容を競合と比較してギャップを潰す

打ち手を実行した後、2〜4週間程度のタイムラグを置いて再度SQPを確認し、シェア改善が見られたかを定量検証する流れが基本です。

使い方③: Helium10 CerebroでKWの周辺語を深掘り

SQP単体では「自社ASINが既にエントリーしているKW」のシェア分析しかできません。新規KW開拓には、Helium10のCerebro等で周辺語を取得してから、SQPで自社ASINとの紐付き状況を再確認する流れになります。

推奨フロー

  1. SQPで現状の主要KWとシェアを把握
  2. 主要KWのうち上位3〜5個を Helium10 Cerebro に投入し、周辺語・関連KWを取得
  3. 取得した周辺語をリスティング(タイトル・箇条書き・バックエンドKW)に反映
  4. 4〜8週間後、SQPで新規追加KWのインプレッションシェアが上昇しているかを確認

Cerebro深掘り分析のイメージ

Cerebroの操作手順は別記事 Helium10 Cerebroの使い方 を参照してください。

詳細を見る →

数値の取得精度を比較したい場合

SQPはAmazon内部の生データに基づくため、検索クエリの実態としては最も信頼性が高い情報源です。一方、外部ツール(Helium10、セラースプライト等)で取得できる検索ボリューム推定値とSQPのインプレッション数を併用することで、KW別の市場規模感をより精度高く掴めます。Brand AnalyticsとHelium10それぞれの強み・弱みは、別記事 Brand AnalyticsとHelium10の違い・使い分け でまとめています。

レポート出力と分析サイクル

SQPはCSV形式でダウンロードできるため、社内BIツールやスプレッドシートに取り込んで時系列分析に活用するのが推奨運用です。

推奨される分析サイクル

頻度作業
週次主要ASIN×主要KWの3シェア定点観測
月次弱点パターン分類(KW非露出 / 見せ方 / 商品ページ)を更新
四半期周辺語取得 → リスティング反映 → SQPで効果検証
半期カテゴリ全体での自社ポジション評価とKW戦略再構築

特にローンチ直後3ヶ月は週次の追跡が必須で、ある程度KWポジションが安定してきた既存ASINは月次〜四半期に頻度を落として運用するのが現実的です。

まとめ

SQPは、Brand Analyticsの基本レポート群の上位互換ではなく、KW×ASIN単位でファネル各段階のシェアを診断するための専用ツールです。ABAの基本レポートで全体像を掴み、SQPでKW別の弱点を可視化し、Helium10 Cerebroで周辺語を深掘りする、という3層構造で運用するのが王道です。

SQPを使いこなす優先順位は以下が現実的です。

  1. Brand Analyticsを既に活用している前提でSQPに進む
  2. 主要ASIN×主要KW の組み合わせで3シェア(インプ/クリック/購入)を週次取得
  3. 弱点パターン4分類で打ち手を絞り込む(リスティング / 見せ方 / 商品ページ / 健全)
  4. CerebroでKW周辺語を取得→リスティングに反映→4〜8週間後にSQPで効果検証
  5. CSV出力で社内BIに蓄積→四半期レビューで戦略再構築

「サーチクエリパフォーマンスをただ眺めて終わっている」状態から脱するには、3シェアの差分を弱点パターンに対応させて打ち手まで落とし込む運用フローを定着させることが鍵です。

よくある質問

Q1. SQPはBrand Analyticsとは別料金ですか?

別料金は発生しません。Brand Analyticsの一部として無料で提供されています。利用条件もBrand Analyticsと同じで、Amazon Brand Registryの完了が必須です。

Q2. SQPの週次データは何曜日に更新されますか?

Amazonの公式仕様としては、毎週後半(おおむね木〜金曜日)に前週分のデータが反映される運用です。月次・四半期データはそれぞれ翌月・翌四半期の初旬に揃います。タイミングは時期によって前後する場合があるため、CSVエクスポート時に「データ反映日」の表記を必ず確認してください。

Q3. SQPと従来のSearch Terms Reportはどう使い分けますか?

Search Terms Reportは「Amazon全体でどんなKWが何位で検索されているか」「上位3商品はどこか」というマクロ視点で、新規参入KWの探索や競合の集客KW逆算に向いています。SQPは「自社ASINがそのKWでどれくらいのシェアを取れているか」というミクロ視点で、既存ASINの売上改善・打ち手の優先順位付けに向いています。両者は補完関係にあり、片方だけで完結する設計ではありません。

Q4. ASINビューとブランドビューはどちらを優先すべきですか?

ブランド全体のSEO戦略やKW開拓にはブランドビュー、特定ASINの売上が頭打ちになっている原因分析にはASINビューを使い分けます。新規KWを攻めるフェーズではブランドビューが先で、ASINビューは個別深掘り用と捉えるのが現実的です。

Q5. SQPのデータをHelium10と突き合わせるメリットは何ですか?

SQPはAmazon内部のシェア比率(%)を返しますが、絶対的な検索ボリューム数値は提供されません。Helium10 Cerebroの推定検索ボリューム(月間検索数)と突き合わせることで、「シェア5%でも実数では月間2,000インプレッション相当」というように、改善打ち手の優先順位を絶対値ベースで判断できるようになります。