ブランドを Amazon に出品していて偽造品の被害に悩んだ経験があるなら、「Amazon Counterfeit Crimes Unit」という名前を一度は目にしているかもしれません。CCU は Amazon が 2020 年に設立した偽造品対策専門チームで、元連邦検事や捜査員で構成され、偽造品販売者への民事訴訟・刑事告発を通じてプラットフォーム外まで踏み込んだ取り締まりを行っています。
日本語の解説情報がまだ少ない領域ですが、Brand Registry / Project Zero / Transparency と並ぶ Amazon の偽造品対策の柱として知っておく価値がある仕組みです。本記事では CCU の活動内容と、ブランドオーナーが取れる協力アクション、民間監視ツールとの併用方針までを整理します。
Counterfeit Crimes Unit(CCU)とは — Amazon が抱える偽造品対策専門チーム
Counterfeit Crimes Unit(以下 CCU)は、Amazon が偽造品販売者の特定・調査・法的措置を専門に行うために 2020 年 6 月に設立した社内ユニットです。元連邦検事、データアナリスト、捜査経験者など、法執行機関出身者を中心とした多国籍チームで構成されています。
主な役割は次の3つです。
- 偽造品販売者の特定: Amazon 内部のデータと公開情報を組み合わせ、出品停止後も別アカウントで戻ってくる悪質販売者を追跡する
- 民事訴訟・刑事告発: ブランドオーナーや法執行機関と連携し、米国・EU・中国などで訴訟を提起する
- 国際的な摘発支援: 各国の警察・税関と情報共有し、偽造品工場の摘発につなげる
CCU の特徴は、Amazon プラットフォーム内部で完結する対応(出品停止・アカウント停止)にとどまらず、販売者の身元を法的に追跡し、再発を構造的に抑止する点にあります。
設立背景 — Amazon の偽造品対策史と CCU 誕生まで
CCU が 2020 年に設立された背景には、Amazon が長年抱えてきた偽造品問題への批判の蓄積があります。
| 年 | 主な動き |
|---|---|
| 2017 | Brand Registry 2.0 公開、ブランド保護ツール群の本格整備開始 |
| 2019 | Project Zero 開始、出品者側で偽造品を直接削除できる権限を一部ブランドに付与 |
| 2019 | Transparency プログラム本格運用、QR コードによる真贋確認 |
| 2020 | Counterfeit Crimes Unit 設立、法的措置による外部抑止に踏み込む |
| 2021 | 米国・EU で複数の集団訴訟を提起、中国当局と連携した工場摘発を公表 |
Project Zero や Transparency はあくまで「Amazon のプラットフォーム内で偽造品を見つけて削除する仕組み」でしたが、削除されても別アカウントで戻ってくる販売者が後を絶たないという現実がありました。CCU はその限界に対する Amazon の回答であり、プラットフォーム外で販売者を法的に追い詰めることで、再出品を構造的に減らす狙いがあります。
CCU の活動内容 — 訴訟・摘発・連携の3つの軸

CCU の活動は、公開されている報告書や Amazon Brand Protection Report から大きく3つの軸に整理できます。
1. 民事訴訟
CCU が最も多く公表しているのが、ブランドオーナーと共同で行う民事訴訟です。違反販売者に対して連邦地裁・州地裁などで訴訟を提起し、損害賠償と将来の販売差し止めを求めます。
実例として、ハーマンインターナショナル、YETI、JL Audio などの著名ブランドが Amazon と共同で訴訟を起こしたケースが報告されています。これらの訴訟は単独でブランドが提起するよりも、Amazon の内部データ(販売記録・アカウント情報・配送先など)を証拠として活用できる点で効果が高いとされています。
2. 刑事告発・法執行機関への情報提供
民事訴訟と並行して、CCU は組織的な偽造品ネットワークについては米国 FBI、欧州ユーロポール、中国公安当局などへ情報提供を行っています。
特に中国の偽造品工場については、現地当局との合同捜査によって工場差し押さえ・在庫押収につながった事例が複数公表されています。プラットフォーム内の出品停止だけでは到達できなかった供給源そのものを叩く動きとして注目に値します。
3. ブランドオーナーとの連携
CCU は単独で動くチームではなく、ブランドオーナーからの情報提供を起点に動くケースも多くあります。Brand Registry に登録済みのブランドが、繰り返し偽造品被害を受けている場合、CCU が個別案件として引き取って法的措置に進めることがあります。
Brand Registry との連携 — CCU が動く前提条件
CCU の活動はブランドの自助努力と一体になって機能します。具体的には、Brand Registry への登録が CCU 案件として取り上げられる前提条件になっています。
Brand Registry に登録すると、以下の経路で CCU との接点が生まれます。
- Report a Violation ツールで繰り返し違反販売者を通報すると、Amazon 側のデータと突合される
- Brand Protection Report で過去の被害状況を時系列で見える化できる
- 一定規模以上の被害ブランドには、Amazon 側からアカウントマネージャーや法務担当が個別連絡することがある
Brand Registry の登録手順そのものについては、Amazon ブランド登録の申請方法で詳しく解説しています。登録の限界(登録しただけでは偽造品を防げない理由)については、Amazon Brand Registry の限界とはを参照してください。
Project Zero / Transparency との位置関係

Amazon の偽造品対策プログラムは複数あり、それぞれ役割が異なります。CCU は他のプログラムと直列で機能する最終層として位置づけられます。
| プログラム | 役割 | ブランド側コスト |
|---|---|---|
| Brand Registry | 通報・監視の基盤、最低限の保護機能 | 無料(商標必須) |
| Project Zero | 違反出品を ブランド側で直接削除できる権限 | 無料(条件付き、招待制) |
| Transparency | 商品単位の真贋確認 QR コード | 1コードあたり数セント |
| Counterfeit Crimes Unit | 訴訟・刑事告発による外部抑止 | 案件に応じて Amazon と共同 |
下流から見ると、Brand Registry → Project Zero / Transparency → CCU という補完関係で、軽度な違反から組織的な偽造ネットワークまでを段階的にカバーする構造になっています。
Transparency の費用対効果についてはAmazon Transparency の費用は割に合うか、Project Zero の運用についてはAmazon Project Zero ガイドで詳しく扱っています。
セラー側ができる協力アクション — CCU に「届く」状態を作る
CCU は基本的に Amazon 内部のチームであり、ブランドオーナーから直接コンタクトを取れる窓口は限定的です。ただし、自社の偽造品被害が CCU の目に留まりやすい状態を作ることは可能です。
1. Brand Registry の通報を継続的に行う
単発の通報だけでなく、違反販売者を継続的に通報し続けることで、Amazon 側のデータに被害パターンが蓄積されます。組織的な偽造ネットワークの兆候が見えた場合、CCU が個別案件として引き取る判断材料になります。
2. 証拠を時系列で残す
偽造品を発見した時点で、商品ページ・販売者情報・購入記録・偽造品の写真などを時系列で保存しておくことが重要です。CCU が訴訟に進む場合、これらが証拠資料として活用されます。
3. アカウントマネージャーや法務担当とつながる
一定規模以上のブランドであれば、Amazon 側からアカウントマネージャーが付くことがあります。被害規模が大きい案件については、アカウントマネージャー経由で CCU や法務チームに案件を持ち込む経路が機能します。
4. 知財侵害申告(Test Buy 含む)を正しく実施する
偽造品の現物を Test Buy で確保し、知財侵害申告を行うことは CCU 案件化の重要な入口です。申告手順についてはAmazon 知財侵害申告テンプレートで詳しく解説しています。
民間監視ツールとの併用 — CCU だけでは追いつかない領域

CCU の活動は強力ですが、個別の相乗り出品や軽度な違反に対しては、CCU が個別案件として取り上げることはまずありません。CCU が動くのは「組織的・反復的・大規模な偽造品ネットワーク」が典型で、日々の細かい相乗り対応は依然としてブランドオーナー自身の責任範囲です。
ここで重要になるのが、民間の監視ツールで日常的な検知と通報を仕組み化することです。Sentrio のようなマルチモール対応の監視ツールを使えば、新規相乗り出品が発生した時点で自動的に検知され、通報フローまで一貫して回せます。
Sentrio や他の検知ツールの比較についてはAmazon 相乗り検知ツール比較を参照してください。日常監視は民間ツールで、組織的被害は CCU 連携でという二層防衛の考え方が、Amazon ブランドオーナーにとっての現実解になります。
CCU が動くのは大規模・組織的な案件が中心です。日々の新規相乗り検知と通報は監視ツールで自動化し、組織的被害が見えてきた段階で Brand Registry 経由で Amazon にエスカレーションする運用が現実的です。
まとめ — CCU は「最終層」、日常監視は別途必要
Amazon Counterfeit Crimes Unit の要点を整理します。
- CCU は 2020 年設立の偽造品対策専門チーム。元連邦検事・捜査員らで構成
- プラットフォーム内対応にとどまらず、訴訟・刑事告発・国際捜査連携で外部抑止に踏み込む
- Brand Registry → Project Zero / Transparency → CCU の段階的構造の最終層
- CCU が動くのは組織的・反復的な案件が中心、個別の相乗り対応は基本的に対象外
- ブランドオーナー側は、Brand Registry 通報の継続・証拠保全・知財侵害申告で「届く」状態を作る
- 日常的な相乗り監視は民間ツールで自動化、組織的被害は CCU 連携という二層防衛が現実解
CCU は Amazon が偽造品問題に本気で取り組んでいる象徴的なチームですが、すべての被害を救ってくれる窓口ではありません。「日常監視は自分たちで、組織的被害はエスカレーション」という役割分担を理解した上で、Brand Registry 登録と民間監視ツールの両方を整えるのが、ブランドオーナーにとって最も実効性の高い構えと言えます。


