Amazonで相乗りや偽造品出品を見つけた時、最も効果的な対抗手段はAmazon知的財産権侵害申告フォームからの公式申告です。ただし申告文が曖昧だと却下されたり、審査が長引いて相乗り出品が残り続けたりします。
この記事では、Amazon知財申告の種類(商標・意匠・著作権・特許)と、商標権侵害・著作権侵害・意匠権侵害の3ケースの文例、申告前の準備と却下される主な理由までを実務目線でまとめます。 商標登録済みブランドで相乗り対応を自社で進めたい方が対象です。
結論サマリー
- Amazon知財申告は4種類: 商標・意匠・著作権・特許。相乗り・偽造品の大半は商標権侵害で動く
- Brand Registry経由の申告が圧倒的に早い。一般フォームより優先処理され、24〜48時間以内に対応されることが多い
- 3つの典型ケースで文例を用意: 商標権侵害(同一ブランド名の無断使用)・著作権侵害(商品画像の無断転載)・意匠権侵害(登録意匠と同一デザイン)
- 申告文は「権利の特定」「侵害の特定」「求める対応」の3点を簡潔に書く。感情的な表現や憶測は避け、事実と登録番号に寄せる
- 却下の主要因は4つ: 証拠不足・権利の紐付け弱・複数ASINの雑な一括申告・Brand Registry未登録。この4つを避ければ通過率は大幅に上がる
Amazon知財申告の種類 — 4カテゴリの使い分け

Amazon知財申告は、侵害されている権利の種類ごとに窓口と必要情報が異なります。まずは4種類の違いを整理しておきます。
| 種類 | 対象 | 主なユースケース | 必要な登録 |
|---|---|---|---|
| 商標権 | ブランド名・ロゴ | 同じブランド名を使った相乗り、偽造品 | 商標登録 |
| 意匠権 | 商品デザイン・形状 | デザインをコピーした類似品 | 意匠登録 |
| 著作権 | 商品画像・説明文・動画 | 商品画像や説明文の無断転載 | 登録不要(創作時点で発生) |
| 特許権 | 技術・発明 | 特許技術を使った模倣品 | 特許登録 |
相乗り・偽造品の大半は商標権侵害で動くのが実務の基本です。意匠権・著作権は補助的に併用するケースが多く、特許権侵害での申告はハードルが高いため、まずは商標権で攻めるのが定石です。
Brand Registry経由と一般フォーム経由の違い
Amazon知財申告には2つのルートがあります。どちらを使うかで審査速度と成功率が大きく変わります。
Brand Registry経由(推奨)
- Brand Registryダッシュボードの「Report a violation」から申告
- 通常24〜48時間以内に対応されることが多い
- ASIN一括申告(最大数百件)が可能
- 過去の申告実績がスコアリングされ、実績があるブランドは優先度が上がる
一般フォーム経由(https://www.amazon.co.jp/report/infringement)
- Brand Registry未登録でも誰でも使える
- 対応は週単位になることが多く、優先度は低め
- 1申告あたりの対応範囲が限られる
Brand Registryへの登録は事実上の前提と考えて動くのが現実的です。登録は商標登録済みブランドなら無料で、Amazonの審査も数日〜2週間程度で完了します。登録手順はAmazon Transparencyの導入手順の前提条件セクションで解説しています。
申告前の準備 — 揃えるべき書類と情報
申告フォームを開く前に、以下を揃えておくのが鉄則です。準備が不十分なまま申告すると「証拠不足」で却下されます。
基本情報
- 権利者情報: 会社名・住所・代表者・連絡先メールアドレス
- 商標登録番号 / 意匠登録番号 / 著作物情報: 登録証のPDF
- 権利の使用開始日: いつからそのブランドを使っているか
- 対象ASINリスト: 申告対象のASINと、それぞれの相乗りセラーのストアID
侵害の証拠
- 相乗り商品ページのスクリーンショット: 商品画像・価格・出品者情報・説明文まで
- 正規品との比較データ: 画像で差異が一目でわかる形式(並列比較がおすすめ)
- 購入証跡(Test Buyを実施していれば): 購入画面、配送伝票、到着商品の写真・動画
- 鑑定書: 検査機関で偽造と判定された場合の鑑定書
申告範囲の整理
- 1回の申告で扱うASIN数: Brand Registry経由なら一括申告可能だが、権利種別や侵害タイプは申告ごとに1種類に絞る方が通りやすい
- セラー単位か商品単位か: 同じセラーが複数ASINに相乗りしている場合はセラー単位、異なるセラーが1つのASINに相乗りしている場合は商品単位
申告フォームの入力項目

Brand Registry経由の「Report a violation」で求められる主な項目は次の通りです。
1. 侵害タイプの選択
- Trademark infringement(商標権侵害)
- Copyright infringement(著作権侵害)
- Design right infringement(意匠権侵害 / 国・地域によって選択肢が異なる)
- Patent infringement(特許権侵害)
- Counterfeit(偽造品)
**Counterfeit(偽造品)**は商標侵害の一種として扱われますが、別カテゴリとして用意されており、Test Buyで偽造が確定している場合はこちらを選ぶと優先度がさらに上がります。
2. 権利の特定
- 商標登録番号(例: 日本なら商標登録第XXXXXXX号)
- 登録地域(日本・米国・EU・中国など)
- 商標の区分(Class 5、Class 21など、対象商品カテゴリ)
権利が「その商品のその区分」に紐付いているかが重要です。たとえば化粧品の商標を家電カテゴリで登録していても、化粧品の商標侵害としては主張しづらい場面があります。
3. 侵害の特定
- 対象ASINのリスト(Brand Registry経由なら最大300件を一括で入力可能なことが多い)
- 侵害内容の自由記述(500〜1000字程度)
- 証拠資料のアップロード(PDF/画像、合計10MB程度が目安)
4. 求める対応
- 出品削除のみ
- 出品削除 + セラーアカウント停止の検討
- 偽造品の場合は在庫物品の差し押さえ・処分
多くの場合は「出品削除」がまず優先で、セラーアカウント停止は偽造品確定後の強い通報で進める方が現実的です。
5. 権利者の宣誓
- 申告内容が真実であること
- 善意をもって権利を主張していること
- 虚偽申告による法的責任を理解していること
虚偽申告はAmazon上での申告権限停止に加え、民事・刑事責任を問われる可能性があるため、根拠のない申告は避けてください。
文例①: 商標権侵害
最も使用頻度が高いのが商標権侵害の申告です。同一ブランド名を使った相乗り、または偽造品のケースで使います。
前提条件
- 対象カテゴリで商標登録済み
- Brand Registry登録済み
- 相乗りセラーが自社の商標を商品ページ・出品者ページで使用している
文例
件名: Trademark Infringement Report - Brand: [ブランド名]
I am the authorized representative of [権利者企業名], the owner of the registered trademark "[商標名]"
(Registration No. [商標登録番号], registered in [国名] on [登録日]).
The following ASIN(s) listed on Amazon.co.jp are selling products bearing our registered trademark
without authorization from our company:
- ASIN: [BXXXXXXXXX] by Seller: [セラー名] (Seller ID: [セラーID])
- ASIN: [BXXXXXXXXX] by Seller: [セラー名] (Seller ID: [セラーID])
We have not authorized these sellers to use our trademark, distribute our branded products,
or list products under our brand name on Amazon.
The products offered by these sellers are believed to be counterfeit / unauthorized parallel imports,
and their listings are confusing consumers who expect genuine products from our authorized distribution channels.
Evidence:
- Our trademark registration certificate (attached)
- Screenshots of the infringing listings (attached)
- List of authorized distributors (attached)
We request that Amazon remove these listings immediately. If Amazon determines that these sellers have
repeatedly violated intellectual property rights, we also request consideration of further action
against the seller accounts.
Sincerely,
[権利者名・役職]
[企業名]
[連絡先メールアドレス]
日本語版
件名: 商標権侵害の申告 - ブランド: [ブランド名]
[権利者企業名]の権利代表者として申告いたします。当社は登録商標「[商標名]」
(登録番号: [商標登録番号]、[国名]にて[登録日]登録) の権利者です。
以下のAmazon.co.jp上のASINは、当社の許可なく当社の登録商標を付した商品を販売しております。
- ASIN: [BXXXXXXXXX] 出品者: [セラー名] (セラーID: [セラーID])
- ASIN: [BXXXXXXXXX] 出品者: [セラー名] (セラーID: [セラーID])
当社はこれらのセラーに対し、当社商標の使用許諾、正規流通品の販売委託、当社ブランド名での出品のいずれも許可しておりません。
これらのセラーが販売する商品は偽造品または正規流通外の並行輸入品と推定され、当社の正規販売ルートから本物を購入しようとする消費者に誤認を生じさせています。
証拠:
- 商標登録証(添付)
- 侵害出品のスクリーンショット(添付)
- 正規販売ルートの一覧(添付)
これらの出品の即時削除を求めます。また、当該セラーが知的財産権侵害を繰り返していることが確認された場合は、セラーアカウントに対するさらなる対応もご検討ください。
敬具
[権利者名・役職]
[企業名]
[連絡先メールアドレス]
書き方のポイント
- 登録番号を具体的に書く: 「商標を持っている」ではなく「第XXXXXXX号」まで
- 「許可していない」を明記: 正規販売ルートのリストとセットで、なぜ無許可と言えるかを示す
- 感情的な表現を避ける: 「悪質」「詐欺」などは使わず、事実に絞る
- 求める対応を明確に書く: 出品削除か、セラー停止の検討まで求めるかをはっきりさせる
文例②: 著作権侵害(画像転載)
商品画像や説明文を無断転載されたケースで使います。商標権侵害と併用すると効果的です。
前提条件
- 著作権は登録不要だが、原著作物の作成日・作成者が特定できる状態
- 相手が自社の画像・説明文をそのまま、または大部分を流用している
文例
件名: Copyright Infringement Report - Original Images/Content: [商品名]
I am the authorized representative of [権利者企業名], the owner of the copyrighted images and product
descriptions for "[商品名]". These images and descriptions were created and first published by our company
on [最初の公開日] on our official website ([自社ECのURL]) and Amazon listing (ASIN: [BXXXXXXXXX]).
The following ASIN(s) have reproduced our copyrighted material without authorization:
- ASIN: [BXXXXXXXXX] by Seller: [セラー名] (Seller ID: [セラーID])
- Infringing content: Product images (images 1-5) copied directly from our listing
- Infringing content: Product description text copied verbatim from our listing
We have not licensed or authorized these sellers to use our copyrighted images or descriptions.
Evidence:
- Original images with creation date metadata (attached)
- Side-by-side comparison of original vs. infringing content (attached)
- Our authorized Amazon listing and official website URLs (listed above)
We request that Amazon remove the infringing images and descriptions immediately, and require the sellers
to create their own original content if they are to continue listing products in this ASIN.
Sincerely,
[権利者名・役職]
[企業名]
[連絡先メールアドレス]
書き方のポイント
- 原著作物の作成日を証明する: 画像ならEXIFの撮影日、自社サイトへの公開日(Internet Archive等でのスクリーンショット)
- 侵害箇所を具体的に書く: 「画像全般が似ている」ではなく「画像1〜5が完全コピー」「商品説明文の第2段落が逐語コピー」
- 対応として「画像削除」を求めるのが基本: 商標侵害と違い、著作権侵害では出品丸ごと削除されないことが多い。画像・説明文の差し替え要求として動く
文例③: 意匠権侵害
商品デザインをコピーされたケースで使います。意匠登録済みである必要があり、登録されていない場合は使えません。
前提条件
- 対象商品のデザインで意匠登録済み
- 相手の商品が登録意匠と同一または類似である
文例
件名: Design Right Infringement Report - Registered Design: [商品名]
I am the authorized representative of [権利者企業名], the owner of the registered design for "[商品名]"
(Design Registration No. [意匠登録番号], registered in Japan on [登録日]).
The following ASIN(s) are selling products that infringe on our registered design:
- ASIN: [BXXXXXXXXX] by Seller: [セラー名] (Seller ID: [セラーID])
The design of the product offered in this listing is identical (or substantially similar) to our registered
design, particularly in the following features:
1. [特徴1 - 例: overall silhouette and proportions]
2. [特徴2 - 例: distinctive pattern on the front surface]
3. [特徴3 - 例: unique handle shape and placement]
Evidence:
- Design registration certificate with illustrations (attached)
- Side-by-side comparison images (attached)
- Technical drawings highlighting the infringing features (attached)
We request that Amazon remove this listing immediately.
Sincerely,
[権利者名・役職]
[企業名]
[連絡先メールアドレス]
書き方のポイント
- 侵害している特徴を具体的に列挙する: 「全体的に似ている」では通らない。「取っ手の形」「表面のパターン」など、登録意匠の特徴的な要素を個別に指摘
- 登録図面と並列比較する: 登録意匠の図面と相手商品の写真を並べた比較画像を添付
- 意匠の類似判断は難しい: 完全に同一でなくても類似と認められるケースがあるため、迷ったら弁理士に相談
申告後の流れ

申告を送信してからの流れは、次のようになります。
タイムライン
- 申告送信直後: 受付完了のメール(Case ID付き)
- 1〜3日以内: Amazon側での1次審査
- 1〜2週間以内: セラーへの通知と反論機会の提供(通常約14日)
- 反論期限後: Amazonが最終判断 → 出品削除またはセラー反論が認められる
セラー側の反論パターン
セラーは次のような反論をしてくることがあります。
- 「正規品を仕入れて販売しているだけ」: 仕入れ伝票を提示してくる。この場合Amazon側は「正規ルート外」を証明する必要があり、権利者側に追加証拠の提出を求めてくる
- 「申告者に権利がない」: 商標登録の有効性を争うパターン。登録証がしっかりしていれば問題ない
- 「申告者の主張が過大」: 著作権・意匠権の類似範囲を狭く解釈してくる
反論が来た時点で追加証拠を速やかに提出しないと、申告が取り下げられて相乗り出品が復活します。反論対応までが1セットと考えてください。
申告成功率を上げるコツ
- Brand Registryでの過去実績を積む: 簡単なケースから申告を重ねてスコアを上げる
- 証拠の質 > 量: 大量の書類より、決定的な1〜2点(偽造品の鑑定書、侵害箇所のハイライト比較)の方が効果的
- 英語版も併用する: 日本語だけだとAmazon USAの審査チームに渡った時にトランスレーション遅延が発生する場合あり
- 1回の申告で1種類の権利に絞る: 商標と著作権を混ぜて申告するより、別申告で進める方が通りやすい
申告が却下される主な理由
却下される多くのケースは、次の4つに分類できます。
理由1: 証拠不足
- 権利の紐付け資料が弱い: 商標登録番号だけで、登録証のPDFが添付されていない
- 侵害の証拠が曖昧: 「相乗りしている」のスクリーンショットだけで、自社商品との差異比較がない
- 対策: 登録証PDF・侵害ページのフルスクリーンショット・比較画像の3点セットを必ず添付
理由2: 権利の紐付けが弱い
- 商標の区分が対象商品カテゴリとずれている
- 商標は持っているが、ブランド名として使っていない期間が長い
- 対策: 商標出願時の区分を対象カテゴリに拡張する、または別の権利(意匠・著作権)で攻める
理由3: 複数ASINの雑な一括申告
- 1つの申告に異なる権利種別・異なるセラーのASINが大量に入っている
- 個別のASINごとの侵害特定が書かれていない
- 対策: 権利種別ごとに分ける、セラーごとに分ける、1申告あたり数十ASIN程度に絞る
理由4: Brand Registry未登録
- 一般フォーム経由の申告は審査が雑になりがち
- 対策: Brand Registry登録を優先する。商標登録済みなら無料で登録できる
却下されたら
却下通知には「何が不足していたか」が記載されていることが多いので、そこを補って再申告します。却下されたまま放置すると、同じセラーが別ASINで相乗りを広げていく傾向があるため、あきらめずに進めるのが重要です。
申告の前段階として「警告メールを送っても反応がない」状態にいる方は、排除までの全体フローをAmazon相乗り出品への警告を無視された時の対処法にまとめているので、この文例と合わせてご活用ください。
まとめ — 3つの文例を使い分けて通過率を上げる
Amazon知財申告は、権利種別ごとに文例を使い分け、Brand Registry経由で申告し、反論対応まで1セットで進めることが成功の前提です。
- 商標権侵害: 相乗り・偽造品の主力。登録番号と「許可していない」の明記が鍵
- 著作権侵害: 画像・説明文の無断転載に併用。原著作物の作成日の証明が必要
- 意匠権侵害: デザインコピーに有効。登録図面と侵害箇所の並列比較が決定打
却下されるケースの多くは「証拠不足」「権利の紐付け弱」「雑な一括申告」「Brand Registry未登録」のいずれかです。この4つを避ければ通過率は大幅に上がります。
商標登録・意匠登録がまだのブランドは、まずは主力SKUの商標登録から着手してください。その後Brand Registryに登録し、本記事の文例をベースに申告を進めることで、相乗り出品排除の実務フローが完成します。


